サプリメント追跡調査の結果
アメリカで行われたサプリメント追跡調査の結果
AREDSで判った事(2001年発表)
AREDSとはAge-Related-Eye-Disease-Studyの略。
年齢に関する眼の病気調査とでも訳せばよいのでしょうか。
・AREDS・・・2001年に発表。(5年間の追跡調査)
米国の国立眼科研究所の主導で行われた「加齢黄斑変性」と「白内障」を対象にしたランダム化対照試験で、11施設,640人を対象にビタミン、ミネラル摂取と病気の発症、進行を比較、検証したもの。
試験デザインは4パターン
1.抗酸化ビタミン(ビタミンC、ビタミンE、βカロテン)
2.微量ミネラル(亜鉛、銅)
3.抗酸化ビタミン+微量ミネラル
4.プラセボ(何の効果もない事が判っている成分)
対象者
55歳~80歳で、黄斑変性発症前で網膜に大型のドルーゼン(視細胞が産生する老廃物が溜まったもの)が存在する、または、すでに黄斑変性症が発症している方。
結果
5年間の黄斑変性への進行率はプラセボ群が28%に対し、抗酸化ビタミン+微量ミネラル投与群が20%と優位に減少し、25%のリスク低下が認められた。
抗酸化ビタミン、微量ミネラルのみもリスク低下効果があったものの、両社併用には及ばなかった。
この時の処方データを基に「オキュバイトプリザービジョン」が発売されました。
処方内容
ビタミンC 500mg ビタミンE 400IU
βカロテン 15mg
亜鉛 80mg 銅 2mg
βカロテンの発がん性について
AREDS調査開始から2年後、喫煙者ではβカロテン摂取により肺がんリスクが上昇する事が報告された為、参加者のうち喫煙者は試験中止となりました。
その為、喫煙者対象に当時効果が期待されていた「ルテイン」をβカロテンに代わり処方された「プリザービジョン+ルテイン」が同時に販売されたのです。
※その後、日本向けに栄養素の量を減らした「オキュバイト+ルテイン」が発売
アメリカで行われたサプリメント追跡調査の結果2
AREDS2で判った事(2013年発表)
2006年にスタートした第2次AREDS。(5年間 50~85歳 患者数4,203名)
「AMDに対し、抗酸化ビタミン+亜鉛の摂取が高リスク者の進行、発症を25%抑える」とのAREDS結果をふまえて、今回はルテイン、ゼアキサンチンとオメガ3不飽和脂肪酸(DHA・EPA)摂取の有効性検証試験。
試験デザインは12パターン
※プリザービジョンに追加(※AREDSを基にすでに販売されているサプリメント)
1.ルテイン、ゼアキサンチン
2.オメガ3(DHA・EPA)
3.ルテイン、ゼアキサンチン+オメガ3(DHA・EPA)
4.プラセボ(プリザービジョンのみ)
プリザービジョンからβカロテンを除いたものに追加
5.ルテイン、ゼアキサンチン
6.オメガ3(DHA・EPA)
7.ルテイン、ゼアキサンチン+オメガ3(DHA・EPA)
8.プラセボ(プリザービジョンからβカロテンを除いただけ)
プリザービジョンからβカロテンを除き、亜鉛を減量※したものに追加
※亜鉛80mgから30mgに減量
9.ルテイン、ゼアキサンチン
10.オメガ3(DHA・EPA)
11.ルテイン、ゼアキサンチン+オメガ3(DHA・EPA)
12.プラセボ(プリザービジョンからβカロテンを除いて亜鉛を減量しただけ)
結果
2001年のAREDS結果を反映して発売された「プリザービジョン」をベースに追加検証した比較検査では1~4まで有意差は認められませんでしたが、「プリザービジョンからβカロテン抜き」と「プリザービジョンからβカロテン抜きと亜鉛減量」に追加した比較テスト5,7,9,11では先回のAREDS処方よりも18%リスク減少が認められました。
今回の結果より従来の抗酸化ビタミン、ミネラルにルテイン、ゼアキサンチンを加えてβカロテンを抜いた処方が一番効果的なようです。
(亜鉛の量は違い無し)
残念ながら今回の検証ではオメガ3(DHA・EPA)の進行防止効果は認められませんでしたが、発症前の予防効果についてはまだ期待されています。
※オメガ3(DHA・EPA)の効果が認められなかった理由としては、期間が短かった事、摂取量が少なかった事が考えられています。
では、なぜプリザービジョンベースの比較検査(1~3)で有意差が出なかったのでしょうか。
βカロテンもルテイン、ゼアキサンチンも同じカルテノイドの一種で、サプリメントから体内に吸収される際、お互いに競合しルテイン、ゼアキサンチンの吸収を阻害していると考えられます。
それに加え、βカロテンには喫煙者(禁煙した場合も同様)が多量に摂取した場合、発がん性が以前から確認されておりますので、βカロテンは摂らない方がよいとの結果になりました。
但し、亜鉛の減量につては有意差が確認できず、今回の見解としては「80mgのままで良し」と言う結論になったようです。
そして、今回のAREDS2の結果より新製品「プリザービジョン2」が発売。※日本で販売されている「プリザービジョン2」は処方変更により「亜鉛30mg」に変更されています。
内容を確認すると現在併売されている「プリザービジョン+ルテイン」と大きな違いは無く、ルテインが1mg増え、ゼアキサンチンが2mg追加されただけです。
また、ここで注意が必要なのは、対象者の食生活の違いも今回の結果に大きく影響があった事です。
簡単に言えば、理想的な食事を摂っている患者は効果が少なく、偏食の患者(野菜嫌い)は効果が大きかったとの結果です。
結局のところ、サプリメントはあくまでも補助食品なわけで、食生活が充実していればそもそも発症、進行リスクは少ないと考えられます。
当たり前ですが、サプリメントを利用する前にまずは食事を見直しましょう。
白内障に対する効果は?
水晶体にルテインが多く存在している事から白内障への効果が期待されましたが残念ながら今回も白内障の予防、進行防止効果は認められませんでした。
白内障は多くの場合、手術による視力改善が得られるとはいえ、高齢な患者にとっては手術以外の発症予防、進行防止が望まれていると感じています。
個人的にはとても残念な結果でしたが、規模は小さいとはいえ、効果ありとの他報告もありますので、今後の検証を期待しています。
以上がAREDS2で判った事でした。
では、判らなかった事は・・・
・DHA、EPAの長期、高容量摂取による黄斑変性、白内障の予防、進行防止効果
・ルテイン、ゼアキサンチンの摂取パターンによる違いルテイン単体、ゼアキサンチン単体、ルテイン・ゼアキサンチン併用に有意差があるのかないのか?
・ルテイン量は10mg以上摂った方が良いのか? など・・・
今のところAREDS3の予定はないとの事。
新しい情報がありましたらまたお知らせいたします。